昭和

「あれ?いつの間にか寝てしまったか」拓馬は、ぼんやりとまどろみの中で思っていた。するとコンコンとドアをノックする音がしたかと思うと、すかさず元気に明るい声が響き渡った。

「拓馬!拓馬!早く起きなさい!学校よ!」

「ん? 学校?」拓馬は状況を理解できず混乱した。「学校?」「学校ってなんだ?」そして元気な声も輝美とは違う。しかしこの声は聞き覚えがある。なにか懐かしい感じだ。

そう、母だ、母の声だ。その瞬間に「えぇ? 母?」で「学校?」状況を理解できず天井を見つめていた拓馬であったが、まずは起きようと思い、ガバッっと起き上がった。

すると物凄い違和感を感じた。(なんだこの変な感じは?)

ソファーで寝てしまったと思っていたのに、何やら子供部屋のような可愛いベッドに寝ている自分がいる。状況を理解できずキョロキョロしながら、とりあえずベッドから出てみようと体を動かしたら

「あれ? あれ? あれれ??」自分の手が小さい、

「あれ?体が小さい」徐々に意識がはっきりしてきた、ベッドから出て鏡に映った自分を見て愕然とした。
「だれだこいつ?」しばらく鏡に映っている自分であろう姿を眺めていた。

ふと気が付いた
「あ、小学生の頃の自分だ なんだこりゃ?」

意識ははっきりしている、しかし自分が小学生、ここで拓馬は思った。

(はは~ん、これは夢の中だな)
夢の中で、これが夢であると気が付く事は、なかなか無いのだが、今回ばかりは、はっきり夢であると認識できた。

自分でもちょっと驚いたが、なにやら楽しそうだとちょっとワクワクしてきた。よくわからないが、せっかく子供になった夢の中だから言葉も子供っぽくしてみようと、なり切ってみる事にした。

「拓馬!、あ起きたね~おはよ~」

母が若い! これはリアルな夢だな~

(よし、子供っぽく)
「母さん おはよ~」と拓馬は子供っぽく言った。
が、その直後、物凄く恥ずかしくなってしまった。そんな拓馬の気持ちなど知らない母は

「さ~ 支度しよ、お着替え~ お着替え~♪」
ご機嫌である。

そんな母の様子を見て、声を聞いているだけで拓馬も嬉しくなっていた。

「あ~子供の頃ってこんな部屋だったんだっけ~ 全然覚えてないけどリアルだな~」

そんな事を思いながら顔を洗い、壁に掛けてあった小さなジャケットと半ズボンに着替えた。そして靴下はハイソックスだ。(お~ 懐かしい~)そしてふと気が付いた。

(体が軽い! 前は90kgも体重が有ったのに、この体は何キロだろう 軽いぞ)と軽快に動ける自分が嬉しくなっていた。

廊下へ出てキッチンへ向かう。何も考えていなかったのだがキッチンの場所も知っていて小走りで向かった。

そしてキッチン直前では靴下でスケートのようにツーと滑って到着。キッチンへ行くとそこには若い父が新聞を見ながら食パンを食べていた。

「父さん おはよ~」元気に挨拶をしてみた。
「お、拓馬 おはよ~」父も機嫌がよさそうでニコニコしていた。

テーブルに座るとテーブルが高い、ようやく顔が出る位だ。なんとかジャムトーストを食べ終わると母がランドセルをスキップしながら持ってきた。

「さ、拓馬、今日から1年生だよ~♪」鼻歌交じりで上機嫌だ。

玄関の方から「ピンポ~ン」と呼び鈴が鳴り「たくまく~ん」子供の声が聞こえてきた。

ランドセルを背負って玄関まで歩いて行くと、外にも子供たちとそのお母さんがおしゃれをした格好で待っている。

そして玄関にはピカピカの新しい靴が置いてある。かかとの所に「いわきたくま」と名前がひらがなで書かれていた。

拓馬はその玄関の靴を見て、なんだか嬉しくなってしまい涙がポロポロこぼれだした。

「あら拓馬、どうしたの? 何か悲しいの?」と心配そうに母が目の前にしゃがんで 涙を拭きながら拓馬の顔を覗き込んだ。

拓馬は「いや、なんていうか うれしくて・・・」
「まぁ、なんていうか なんて言葉使っておませちゃんね」と笑いながら、靴を履かせてくれた。母と手を繋いだ。

その手はちょっと大きくて暖かい。その温かさを感じると、何故かまたこみ上げてくるものがあり、拓馬の目はゼリーのように潤んでいた。

「お父さんに いってきますは?」と母に催促され
「おとうさん いってきま~す」と元気に挨拶してみた。
「いってらっしゃい」と笑顔で手を振っている。

「あ~子供の頃ってこんな雰囲気だったんだな~」と拓馬は、思い出せないその雰囲気を味わいながら、すっかり子供の雰囲気に自分が変化している事に気が付いた。

それにしても、、、ふと我に返った。

それにしてもリアルで長い夢だな。そんな事を考えながらも歩きながら町の様子が本当に古いと感心していた。

昭和四〇年代の家屋が並び、道も舗装されてない砂利道だ。一緒にいる子供たちは誰なのか全く分からないが、それぞれワイワイと色々な事を言いながら歩いている。


つづく・・・第三話(3/42) 小学校



 

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