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部屋に入ると美沙は「明るいお母さんね~」と言うと、拓馬は「うん 楽しいからいいんだけどね」とお尻をさすりながら言った。

ようやく落ち着きを取り戻した拓馬は、美沙に「曲、気に入ってくれたんだね」と言うと美沙は「もう頭から離れないの」と照れながら言った。

拓馬は「それじゃさ、生ピアノに合わせて歌ってみる?」と言うと「やってみる」と即答。声の出し方や歌い方を拓馬は色々教えて、楽しい時間は超高速。

あっという間に夕方になり日曜も終わりに近づいてきた。美沙は「そろそろ帰らなきゃ」と言うと「もうこんな時間か」と拓馬も時計を見て驚いた。

拓馬は「またここで練習できる時間を学校で打ち合わせしよう」と言うと美沙は「そうね、また明日学校で」と話をまとめ帰宅した。

部活の練習

拓馬は学校の授業中、先生の話等ほとんど聞いてないのはいつもの事で、最近はもっぱら曲を作っていた。

中学になると科目ごとに先生が変わる為、そんな授業態度を良しとしない厳格な先生もいた。特に英語の権藤巌(ごんどういわお)先生だ。

話を聞いてない拓馬を見つけると、いきなりややこしい問題を答えよ、と指してくる。

しかし拓馬は英語は得意である。難なくさらりと答えると、更に中学生には難解な英語で質問したりと意地悪をしてくる。

そんな質問が投げられると生徒の注目が拓馬に集まった。さすがに面倒くさくなった拓馬は遠慮せずに答えると、その内容を理解できない生徒たちはシーンとして見ていた。

そして権藤先生に注目が集まる。すると権藤先生は発音が違うとケチをつけだした。拓馬はすかさず「先生の発音はオージーですよね、私のはUKです」とにっこり笑うと、生徒達から「おー」と声が上がり、分が悪いと感じた先生が「わかったわかった」と矛を収めた。

こんな調子なのだが、中間テストでは拓馬は全て満点、いきなり学年でトップの成績を取ってしまった。もうこうなると先生方もあまり文句が言えなくなり、拓馬の授業中の行いは半ば公認となりつつあった。

しかしそんな状況が気にいらなくて仕方がない、音楽の宮本先生は違った。

中学生から音楽の授業にギターが取り入れられており、クラッシックギターが音楽室には置かれていた。前回の人生では拓馬はギターも演奏していた為、これも問題ない。

自宅には親戚のおじさんにもらったセミアコースティックギターがあるのだ。音楽の授業が始まり、ギターの説明を先生がしている時に既にチューニングを終えてしまう。

どんどん先へ進んでしまうので、宮本先生は怒り心頭なのだ。「岩城!まだ待ってなさい!」と何度も教室に響き渡った。ようやく皆がチューニングをするため音を出し始めると、拓馬はもうブルースギターを弾いてカッコイイのだ。

自然と生徒の注目が拓馬に集まる。すると乗って来た拓馬は更に演奏のボルテージが上がり、ミニコンサート状態になってしまっていた。

「こら岩城!何やってる!」宮本先生の怒りの言葉が飛ぶ。拓馬は小さな声で「だってギターの授業じゃん」とブツブツ言っていた。

宮本先生が「なんだって?もう一回言ってみろ!」と更にこちらもボルテージが上がる。拓馬は「なんでもありません」と言うと、宮本先生は鼻から勢いよく息が出た
「フンッ!」

どうもこの先生と拓馬はそりが合わないようであった。この時代は先生の権力が強く、先生にひっぱたかれる事もしばしばあり、悪い事は悪いという先生の判断が優先されていた、学校にクレームを入れてくるモンスター等存在しなく、軍隊のような雰囲気も漂う雰囲気であった。

意識の持ち方

7月に入った頃には吹奏楽部の1年生も慣れてきて、担当楽器の音も出せるようになっていた。

拓馬の提案したルパンも先輩たちは結構練習していたせいかそこそこ出来るようになってきていた。そこで一度皆で音を合わせてみる事に。

顧問の山下先生が指揮台に立って皆を招集した。「さて、一度ルパンを合わせてみよう」ガタガタと皆が移動して、先生が指揮棒を上げた。

緊張が走る。拓馬は後ろで見ていた。そして曲が終わると、先生がダメ出しを始めた。次々と担当楽器のメンバーへダメ出しが行われ、出来ないポイントを指摘していた。拓馬は後ろから見ていて、確かに先生の指摘は間違えではない。

その通りなのだが楽しくない。そこで山下先生に拓馬は「先生、僕にやらせてもらえますか?」と買って出た。

山下先生は「ん? お前出来るのか?」「あぁ まぁ お前の書いた曲だしな」「よし やってみろ」と指揮棒を渡された。

早速指揮台に拓馬は立つと「先輩、この曲僕が指揮します! よろしくお願いします」と挨拶した。そして「音を合わせる前にちょっといいですか」と言って話し始めた。

「この曲カッコイイんです。学校の同級生達が聞いたら腰を抜かすほどカッコイイんです」「で、聞いている人が感動するには、演奏している僕たちが感動する事が重要です。一つ一つの音に魂を込めて集中すると響きが違うんです」

「一番の敵は緊張しちゃう事なので、この敵をまずやっつけましょう」と言うと「どうやって緊張しなくするんだ?」と先輩が言うと、拓馬は
「隣の人を見てみてください」と言うとそれぞれ隣の人の顔を見た。そして

「変な顔してるでしょ?」と拓馬が言った。そして「お互いに笑い飛ばしてください」「爆笑です」と言うと「カカカ」「ははは」「イヒッ」と笑い声が出始めて大爆笑になった。

少し笑いが小さくなった頃に拓馬は「オーケー」と両手で頭の上に○を作った。「笑うと緊張は消え去りますから」「いつも笑いましょう」と言って、今の雰囲気で「もういっかい!」と指揮棒を上げた。

そして曲が始まると、さっきとは迫力が違った。山下先生も後ろで腕組みをしながら見ていて「おっ」となった。そして曲が終わると拓馬は「カッコイイ!」と一言、そしてすかさず「もう一回」と言って指揮棒を上げた。

先輩たちはあれこれ考える余裕も無く拓馬に操られるように上達していったのだ。そんな事を数回繰り返して拓馬は曲が終わると「斎藤先輩 スタッカートの切れが良くなるともっとカッコイイです」「ドラムの山田先輩、スネア一発に命かけて魂入魂してください。そのリズムに全員が乗ってきますから」と次々アドバイスを入れた。

拓馬の言うようにやると雰囲気が全然違う事を実感した先輩たちは、素直に拓馬の言葉を聞き入れて個別練習に取り組んだ。

そして指揮台から降りて振り帰ると山下先生が拍手していた。「岩城、いいね お前上手いよ」と褒めてくれた。

そこから少し離れた場所に1年生のピアノ担当の輝美も見ていて拍手していた。もうこうなると拓馬は吹奏楽部の中心的存在になっていった。

そろそろ陸上部の終了時間が近づいてきた。吹奏楽部はまだ練習するのだが、拓馬は美沙との約束が有る為、先生に用事があるという事で早退を伝え帰り支度をしていた。

その一連の動きを輝美はずっと目で追っていた。そして「お先に失礼します」と一礼して拓馬は帰って行った。

裏門で美沙と待ち合わせて急いで拓馬の自宅へ帰って行った。あまり遅くなるわけにもいかず練習時間は1時間と決めて集中した。




 
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