WS002355


今年から、夏休みの段階から美沙は吹奏楽部に合流し、一緒に練習していた。輝美のキーボード演奏もレベルが高いのだが、小さな体で黙々と演奏する姿をみて、拓馬は提案した。

「輝美、文化祭ではさ、もっと感情を表現してやろうよ」と。お嬢様が上品に演奏しているので、ボディアクションを取り入れるよう促していた。

その指導も、音楽の事なので拓馬は熱く輝美に接していた。輝美は嬉しくて言われるがままにやるのだが、どうもぎこちない。

そんな時間が夏休みに入って増えていった。美沙もその様子を見ていた。拓馬は他の楽器担当のメンバーにも同じ様に熱く接するので、美沙は特段気にしてはいなかった。

そんな夏休みの部活が終わると、そのまま美沙は拓馬の自宅スタジオへ行き、忙しい日々を過ごし、充実していたのだった。

そんなある日、いつものように拓馬の自宅スタジオで、譜面を修正していた拓馬に、美沙が後ろから突然抱きついたのだった。

「お? 美沙 どうした?」と拓馬が聞くと、美沙は沈黙のまま拓馬の首へ両手を巻きつけていた。

拓馬はその様子を察し、右手で美沙の巻きついた手に自分の手をそっと乗せた。美沙の髪からリンスの香りがふわりと漂ってきて、拓馬は大きく息を吸い込んだのだった。しばし時間が止まっていた。

拓馬はゆっくりと美沙のほうへ体を向けると、自分の太ももの辺りへ美沙を座らせた。

そして見つめあったまま時間がまた止まっていた。拓馬は右手で美沙の頬に手を当て、ゆっくりと首へ、その手を滑らせた。美沙はすーっと息を吸い、お互いの口が近づいて行き、二人は長~いキスをした。中学2年の夏の事であった。

そして一旦顔が離れると、美沙は拓馬を見つめ、拓馬の首に回した両手を更に絞って抱きついた。

美沙の白い肌が真っ赤に染まり熱くなっているのが拓馬には肌感触で伝わってきていた。突然の事であったのだが、拓馬はもう美沙だけいればあとは何もいらないと思えるほどの幸せの中にいた。

しばらくすると、流石に拓馬も足が痺れてきた。美沙の両脇へ自分の腕を入れ、抱えるように二人で立ち上がった。

そして後ろにあるベッドへ美沙を座らせた。そして美沙の右側へ拓馬も座った。美沙は下を向いていた。そして美沙は、口角が少し上がった感じで顔を上げ、拓馬の方を見た。

拓馬は笑顔で美沙の顔を見ていた。すると美沙は両手で顔を隠してまた下を向いてしまった。

拓馬は(ま~なんと可愛らしいのだ)思い、左手で美沙を引き寄せて、右手で美沙の頭を抱えるようにして撫でていた。

拓馬はこの美沙の突然の行動に思い当たることもなく、衝動的なのだろうなと考えていた。

何といっても拓馬はもともと五十歳の記憶を持っているので、こうした事に対処するのは、慣れているとまでは言わないが、経験済みなので、さらりとリードする事が出来るのである。

嫉妬

美沙は拓馬に体を寄せたまま、小さな声で「ごめんね」と言った。拓馬は
「うれしいよ」と言うと美沙が言葉を続けた。

「部活でね、拓馬が輝美に一生懸命教えている姿を見ていたら、なんだか輝美に取られちゃいそうな気がしちゃって」と言うのだ。

拓馬は全て理解した。輝美が拓馬に好意を持っていることは知っていたが、美沙はそんな事、心配無いとわかっていても、嫉妬してしまっていたのであった。

拓馬は右手で美沙の右の頬と顎辺りを優しく持ち、顔を上げ、美沙の目を見て言った。

「輝美の気持ちは僕も知っているよ。でも僕には美沙がいる。誰も美沙には勝てないんだ。
だから美沙は何も心配しないでくれたら嬉しいな」

こんな事を言われては、美沙はもう、とろける気分でうっとりしていた。
そしてまたキスをして・・・
以下自粛。。。。




 
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