WS2009_000032


3年生も進学校が決まり、あとは卒業式を待つだけと言う状況になった時であった。吹奏楽部の部室へ行った拓馬を山下先生が見つけ「おい拓馬、ちょっと」と呼び、隣の控室へ連れていかれた。

そして先生が「拓馬、先日BBBテレビから話が来てな、番組でうちの吹奏楽部の演奏を放送したいって言うんだ、どうだ?」と言う話に拓馬は「そりゃ勿論OKに決まってるじゃないですか」と元気よく言った。

先生は続けて「3年生が卒業してしまう前にって事だから、直ぐだぞすぐ」と言うと拓馬は「そりゃ大変だ、直ぐみんなに知らせて準備しましょう」と話は決まり、部室へ戻ると先生が「お~いみんな、ちょっと聞いてくれ」みんなの注目が集まった。

「3年生が卒業してしまう前にBBBテレビで我々吹奏楽部の演奏を放送する事になったぞ!」と言うと一瞬静まり返り「えぇぇぇぇ~~~~~」と驚きの声が上がった。そして「そうなんだ、だから時間が無いから大急ぎで準備するぞ」と言うと「やったぁ~~~~~」と沸き上がり、山下先生は校長室へ向かい、出演を決めた事を伝えた。

そして山下先生はすぐさま部室へ戻って来た。そして拓馬を呼び、「テレビ局からのリクエストが3曲あるんだ、ルパンと月ワル、スイメモだ」拓馬は「え?3分の2は美沙の歌じゃん」と言って笑った。先生は「そうなんだよ、実はな先日の文化センターの公演をBBBテレビのプロデューサーが見に来ていて、この3曲を気に入ったらしいんだ。

時間の関係で「めぐる季節」は入れられないそうなんだ。ちょっと残念がっていたがね」という事で、放送時間と演奏時間の確認とか、細かい作業が始まった。

このニュースは校内放送で全校生徒の知る所となり、そこから親や親戚を通じて町中に広がって行った。勿論藤水女子高にも伝わり、町のヒーロー状態になっていったのであった。田舎町なので情報が広がるのも早く、この藤水市の商店街の人たちの間でも話題になっていた。

拓馬の家でもその話題は大ニュースであり、母は大騒ぎであった。「何着て行こうかしら♪」「美容院も予約しておかなくっちゃ♪」「あ、ハイヒールなんて履いちゃおうかしら♪」と雲の上を歩いていた。

拓馬はそんな母を見て「ねえ 母さん」母は「なに♪」ご機嫌だ。拓馬は少し気が引けたが「母さんはテレビには映らないんだけど・・・」と言ってみた。母は「あら そぉおぉお?」と言うと「あ~ネックレスどれにしよう~♪」とやはり、聞いてない。拓馬と拓馬の父は顔を見合わせて「ププッ」と吹き出していた。

美沙の家では逆に美沙の父が大慌てであった。「大変だぁ~大変だぁ~」と家の中をうろうろ歩き回り、親戚の家に電話しては大声で話していた。そんな忙しい父などいないかのように、美沙と美沙の母はテーブルで紅茶を優雅に楽しんでいた。

美沙の母は「ねえ美沙 BACミュージックだっけ?スカウトの話断ったんだって?」と美沙に聞いていた。そして「BACも失礼よね まだ中学生の子供にそんな話するのに親へ何にも連絡しないで、いきなり学校へ行くだなんて」美沙は「そうね」と言いながら紅茶を一口飲んだ。

美沙は「拓馬がね 話を聞いて即断ったのよ あのBACの人、スカウトで断られた事が無いみたいな感じで面喰ってた」そ言うと母は「あら そうだったの」と優雅に笑いながら「そんな顔 見て見たかったわ ふふふ」と穏やかな時間が流れている、が「おい由美子 あのネクタイどこへしまった?」と父は大忙し。

由美子は「2階のクローゼットにあるでしょ?」と言うと父は「そうか」と言い残し階段をドタドタ登って行った。美沙の母は「ところで 美沙はレコードデビューってどう思ってるの?」と聞くと美沙は「分からないわ 拓馬についていくだけ」と両手でティーカップを包むように持つと、カップの中を見つめた。

そしてふと顔を上げ「それでね 拓馬がきっぱり断った後 校長先生がね 拓馬の判断を凄いって褒めていたわ」「そして 拓馬に任せれば安心だねって 私の顔を見て言ってくれたの」と目を細めた。

母も目を細めながらゆっくりうなずいた。「ガタン ドタン」2階から何やら大きな音がしていた。美沙と母は顔を見合わせて、肩をすくめながら笑っていた。

学校では同級生達が「おい 拓馬 山上美穂のサインもらってきてくれよ」とか「俺も吹奏楽部に加えてくれ カスタネットなら出来るから」など、あれやこれやと言われて拓馬も困っていた。

拓馬は「あのさ テレビ局にいつも山上美穂とかいるわけじゃないんだよ」と説明すると同級生は「え~いないのか」と本気で残念がっている。アホな中学生達であった。それでも一大事件で盛り上がっていて、楽しそうなので拓馬も半分冗談で笑いあっていた。


つづく・・・





 
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