WS002364


拓馬はあらかた準備が整った時、ふと菜緒の事を思い出した。一度も遊びに来ないじゃないか、と怒られたことを思い出したのだ。拓馬は菜緒に電話してみた。

菜緒は静かに拓馬の電話に答えていた。拓馬は「それじゃ明日の夕方 行きますね」と電話を切った。拓馬は冷静な菜緒の様子に、少し拍子抜けしていた。そして翌日、菜緒の家に到着すると「こんにちは」と言うと隣の家から「は~い」と九官鳥だ。

「プッ いるいる」と思っていたら「ガラッ」と玄関が空いて、菜緒が出てきた。少し低い声で菜緒が「いらっしゃい どうぞ」拓馬は(あれ? まだ怒っていて機嫌悪いのかな?)と心配になりながら、懐かしい部屋へ通された。

拓馬は「あ~懐かしい~」と言うと、菜緒が「おい なんで今まで来なかったんだよ」とふくれていた。拓馬は「ごめん 色々あってね なんか来れなかったんだ」と言った。菜緒はみるみるうちに目に涙がいっぱいになり、拓馬のほうへ近寄った。

そしてガバッと拓馬に抱き付いた。「バカ~」と言うと菜緒は拓馬の胸に顔を押し付けて号泣してしまった。拓馬は驚いたが、そんな菜緒を愛おしく思い、両手で包み込むように菜緒を抱きしめた。ひとしきり泣くと、菜緒は落ち着いたのか

「ごめんね」と一言言って「座って」とこたつへ座った。菜緒はタオルで涙を拭くとパッと表情を変えて笑顔になった。「卒業したらどうするの?」と菜緒はいきなり聞いてきた。拓馬は「東京へ行くんだ。大沢学園高校って知ってる?」と言うと「うううん 知らない」

拓馬は「実はソローミュージックって会社と契約したから、多分今年レコードデビューすると思う」と言うと、菜緒は口が空いたまま拓馬を見つめていた。拓馬は菜緒に「そんなに口を開けてると、鳥が巣を作っちゃうよ」と言うと、菜緒は「あはっ」と笑い、「何それ、凄いじゃない ソローなの?」と興奮気味に答えた。「へぇ~」と菜緒はお姉さんっぽく振舞っていた。

「いつ行くの?」と菜緒が言うと拓馬は「今月の終わりなんだ」と答え「そっかぁ~ それで私の所にも挨拶に来てくれたのね」とこたつに両手を入れながら拓馬を見ていた。菜緒は「ちょっと見ないうちに成長したね~」と、でかくなった拓馬を見ていた。

「そうか~ ソローかぁ」「ふぅ~ん」「レコードねぇ・・・」「すごいね~」と独り言をブツブツ言いだして「東京へいっちゃうん。。。なぁあぁぁ~」と、また泣き出してしまった。拓馬はそんな愛おしい菜緒をこたつに座ったまま自分の方へ引寄せて、肩を抱いてあげた。

すると菜緒の泣き声は一層大きくなり「わーーーーー」と泣いてしまった。拓馬は静かに落ち着くのを待ち続けた。すると菜緒が顔を上げて「元気でやれよ」と言った。拓馬は「うん」と言うとそのまま菜緒にキスをして、菜緒もこたつから両手を出して、拓馬の首に手をまわした。

そして菜緒は下を向き「お前の事好きなんだけど、忘れなくっちゃいけないよな」「私の方がずっとお姉さんなんだもんな」と言うと菜緒は顔を上げ「今日は来てくれてありがとう」「本当に成功するように祈ってるから」と涙でぐっしゃりな顔で言ってくれた。

拓馬も涙を流しながら「菜緒さんもね 幸せになってね」と言うと「絶対に幸せになってやる」「任せろ」と言い、菜緒は後ろからタオルを取ると、拓馬に「はい」と渡した。二人で涙を拭いてから菜緒の音楽教室の事とか色々話を聞いたりしていた。

そして帰り際、菜緒が「はい これ」と拓馬に小さな箱を手渡した。「開けてみて」と菜緒が言うと「なんだろ」と拓馬は蓋を開けた。そこには「ト音記号」の形をしたピンバッチが入っていた。菜緒は「テレビに出たリするとき、アクセサリーが無かったらこれ使って」と言った。

拓馬は「うわ これ いい!」と大喜び「菜緒さん ありがとう」と菜緒を抱き寄せて、おでこに軽くキスをして「それじゃ!」と別れを告げた。菜緒も「元気でね! たまには帰って来いよ」と笑顔で手を振ってくれた。




 
なかなかいいね、と思ったらポチッとね!
 ↓↓↓ にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村