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そして拓馬と美沙二十五才の春、正式に結婚する事が決まり、藤水市へ報告に戻って来た。岩城家と水野家はそれはもう大変な騒ぎで、ついでにパパラッチも引き連れてきていた。その情報は同級生たちの間にも瞬く間に広がり、お祝いを言おうと拓馬と美沙の家の周りに集まったりしていた。

結婚式は東京のホテルで行われ、新婚旅行はハワイと定番のコースであった。それでも美沙の人気は衰えず、旅行から帰っても大忙しであった。一方拓馬はと言うと、作曲活動の傍ら、ビジネスを始めていた。

小さなビルを購入し、事務機器のレンタル業だ。それから日本は景気が急上昇を始めていた。当然拓馬の持つビルも資産価値が上がり、銀行はお金を借りてくれと、連日押し寄せるようになっていた。拓馬は迷うことなくビルを担保に銀行から融資を受け、次のビルを購入と、バブル景気特有の倍々ゲームを行っていた。

拓馬は(やはり日本はバブル景気に突入した)と密かに思っていた。そして次々と購入した資産がかなり増えた。それでも加熱した景気はとどまる所を知らず上昇を続けていく。そして拓馬二十八才の秋ごろ、突如購入したビルを売却し始めて、事務機器の会社までも売却してしまった。全ての資産を処分した頃には拓馬は二十九才になっていた。

拓馬は美沙に「美沙 資産は全て処分した。これから音楽活動の拠点をハワイに移そう」と提案した。美沙はとても喜んだ。さすがに美沙ももう疲れていて、辞め時を考えていたのだ。

拓馬は続けて「そしてハワイで子供を作ろう」と言うと美沙は「嬉しい 大賛成!」と即決した。ソローとの契約も丁度更新の時期で、拓馬は前々からこの事は伝えてあった。そして美沙は活動休止宣言を出してファンを驚かせた。

拓馬と美沙の両親も、予定通りの連絡でこちらも問題ない。東京の住居を片づけてハワイへ引っ越したのは拓馬と美沙が三十才になった4月であった。拓馬は(来年バブルがはじけるはず)と思いながら、しかしそんなことは美沙には言えないので、黙ったままだ。

翌年、拓馬達が三十一才になってから美沙は娘を出産した。国際電話で連絡を受けた両親たちは大喜びで、ハワイへ駆けつけた。そして幸せな時間が超特急で過ぎて行った。

そしてその年、日本ではやはりバブル経済が崩壊して大変な事になっていた。拓馬は(やはり来たか)と思いながらも胸の奥にしまったままでいた。拓馬の父は一気に仕事が無くなってしまい、暇な毎日を過ごしていた。「拓馬の奴、ほんといい時期にビジネスを引き上げてハワイへ引っ越したな。まるでこれから起こる事を全部知っていたかのようだ」と感心していた。


つづく・・・





 
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