WS002369


それから1か月後「ぴんぽ~ん」と呼び鈴が鳴り、拓馬の家に誰か訪ねてきた。

輝美である。「久しぶり」輝美はそういうと、拓馬は静かに

「あぁよく来てくれたね、どうぞ」と家に招き入れた。

輝美は美沙にお線香をあげると、ソファーに座った。

ソファーの隣には大きなバッグが置かれていて、拓馬は着替えなどの荷物を入れていた。

拓馬が紅茶を入れて持ってくると輝美は「ありがとう」と言ってそのまま一口飲んだ。「おいしい」と言うとカップを紅茶の皿へカチャリと乗せて拓馬をジッと見た。

拓馬は黙ってそのしぐさを見ていた。すると輝美は

「ねぇ 今日の夜、飛行機で旅に出るでしょ?」と言った。
拓馬は誰にも言っていなかったので驚いた。

「どうしてそれを?」と輝美に聞くと、輝美はすっと立ち上がり、素早く拓馬の左側へ移動して、しだれかかった。そして見上げながら

「その飛行機、乗らないで」

と言うのだ。不思議に思った拓馬は
「理由を教えてくれるかい?」と言うと輝美は

「その飛行機、事故に遭って あなた死んじゃうの」と言うのである。

拓馬は驚きながら「どういう事だ?」と聞きなおした。

輝美は「前世の事、あなた覚えてるでしょ?」と言い出した。

拓馬は心臓が飛び出しそうになるくらい驚いた。輝美は続けて

「あなたの学生の頃を見ていてすぐわかったわ」と言うのだ。

拓馬は「どうしてそう思うのか?」と聞くと輝美は

「覚えているのは、あなただけじゃないのよ」

「私もそうなの」と言った。

拓馬には驚愕の事実である。拓馬はそのまま黙ってしまった。

輝美は「私が覚えている前回の人生で、あなた今夜死んじゃうの」

「死ぬほど泣いたわ」

「そうしたらね」と言い始めた時、拓馬は「どんな事故だったんだ?」と聞いた。

輝美は「何かのトラブルで海に墜落したの。残骸が少しだけ回収されて、乗客は誰も見つからなかったのよ」と説明された瞬間、学生の頃見た夢を思い出した。

物凄い衝撃でそのあと大量の水が流れ込んで、苦しかった夢。はっとした。「あの夢に出てきた光景は、飛行機が墜落した時の記憶だったのかもしれない」と思えたのだ。

輝美は「そう、それじゃ前回の事故に遭った人生は覚えてないのね」と言った。拓馬は「え?前回?」「ん、まあ、君の言う通り 本当は前回の人生の記憶は残ったままだったんだ」と白状した。

すると輝美は「拓馬の覚えてる人生はどんな人生だったの?誰と結婚した?」と聞くので、正直に「輝美、君だよ」と言うと、輝美は

「違うわ、前回もあなたは美沙と結婚して今夜、あの飛行機に乗るの」と言うのだ。拓馬は混乱した。

輝美は「だから、今回の人生は私結婚しないで、今日という日を待ち続けたの あなたを助ける為」そう言うと拓馬はしばらく考えていた。外は夕暮れで赤い夕陽が部屋に入り込み、部屋全体が赤く染まっていた。

その時拓馬は輝美を見て「はあぁ!」と息を激しく吸い込んだ。夕日で赤く染まる部屋でソファーに座り、左側に輝美がいる。拓馬の覚えている前回の人生の最期の記憶と重なった瞬間だ。

拓馬は「輝美 この状況」と言うと輝美は「思い出したのね」と言った。

拓馬は「君は 生まれ変わっても一緒にいてくれる? と言ったな」
と言うと輝美は拓馬にギュッと抱き付いた。

拓馬は「すると君は、俺が美沙と結婚する人生を2回見ていたって事か?」と聞いた。輝美は「そうよ」と答えると、拓馬は少し興奮気味に

「それじゃ君は 俺を飛行機事故から守るために、そしてその前の約束の為に100年も待ってたというのか?」

輝美は「長かったわ」と言うと拓馬は何も言えなくなり、輝美を抱きしめるしかなかった。

「なあ、輝美、俺が覚えている前回の人生は、君と結婚したんだ」
「そして五十才の誕生日のあの日、ソファーで寝てしまって、ふと目が覚めたら小学1年生になっていたんだ」
「だから、そのあとの事を覚えていないんだ」

輝美は「私も記憶はそこで途絶えているの」
「私は赤ちゃんで生まれたわ」

拓馬は「そうか、それから君は、俺が美沙と結婚する人生を2回見たと言ったな」

輝美は「そうよ、私も最初は混乱したわ。でも、なぜだか分らない」

拓馬は「前回の美沙との結婚は、まるで覚えていないんだ」

「でも多分、飛行機が落ちた時の衝撃と水が雪崩込んでくる感じは、悪夢のように何度も見たよ」

「そして、縁がありそうな女性もいたが、それが何なのか分らない」

「この世界は一体どうなってるんだ」と夕日を見つめながら茫然としていた拓馬であった。

「ねえ拓馬、これからの人生、一緒にいてくれる?」

「ああ、もちろんだ」
「約束も思い出したし、更に君に命を救ってもらったしね」

と輝美の顔を見ると輝美は
「うれしい」

と拓馬の胸に顔を押しつけていた。

拓馬は輝美を抱きしめながら、人生の不思議を考えていた。

「なあ、輝美」

「なあに?」

「君と結婚した時の人生と今回の人生で、君のお父さんは同じ人だったかい?」

輝美は顔を拓馬の方に向けると

「別人だったの。不思議でしょ」

「でも、性格とか雰囲気は同じだったの」

拓馬は「面白いね、同じような人生でも少しずつ違うんだ」

更に「それじゃ、前回の僕が飛行機事故に遭う人生の事も教えてくれるかい?」

輝美は「うふっ、それもちょっと面白いわ」

と言うと、二人は前々回の人生の、夕日を眺めながら座っていたソファーでの続きのように、会話は続いていったのだった。



おわり。。。あとがき




 
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